雨〜始まりと終わり〜

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  第二話 生まれいづる想いが 2  

 キストは寝台の上に背負っていた少年を寝かせると、次いで冷たく冷やした水に厚手の布を入れた桶を持ってきたユウリを見た。ユウリは真剣に厚手の布を絞り、少年の額においてやる。
 それを見ながらキストは、口を開いた。
「ユウリ、お前はこの少年の面倒な?」
「え?」
 疑問系で聞いているはずの言葉はけれどユウリにとって、断定系として聞こえた。その突然の言葉にユウリはなんと返していいのか戸惑い、固まってしまう。すると、後ろから追い討ちをかけるように言葉が飛んできた。
「そうよ、ちゃんと面倒、見なさいね?」
「!?」
 ばっと、後ろを振り向くとそこに立っていたのは、長い栗色の髪を腰まで無造作に伸ばしている女性だった。彼女は扉に寄りかかりながらも拒否を許さない声音でユウリに再度言う。
「面倒、見るのよ?」
 彼女、ユウリの母・ティエイラは問答無用でユウリに笑顔で凄みをかける。
「・・・・・・はい」
 ユウリはそれを拒絶できるはずもなかった。ティエイラ、その人は一度決めたことを何が何でも押し通してしまうのだから。


 ユウリは少年の髪を掻き分け、額においていた布をもう一度冷やしておいた。そして、少年を観察する。
 歳は同じくらいだろうか。栗色の髪はこの国では一般的な髪色だ。対して、あの青い瞳は珍しかったが。痩躯な体にしては引き締まっており、どこにも無駄なものはついていなかった。
 梳けば流れるように絡む髪を撫でながら、ユウリは考えていた。今まで忘れていたことを。

 どうしてこの少年がここにいられるのかを。

 ここは容易く人が入ってこれるところではないのだ。なのになぜこの少年は入ってくることができたのか。
 夢が蘇る。
 どくん、と鼓動がなる。
 体を縮こめて、その衝動に耐える。
 額に冷や汗が伝う。
 どうにか衝動を押さえ込むと、疲れたようにユウリは寝台に沈み込んだ。


+++

「いいの?」
「ああ」
「約束の日が迫ってる。でも、これは・・・・・・」
「もしかしたら、これが・・・・・・」
「・・・・・・ええ。ええ、そうかもしれない」
「見守っていこう。これは私たちが背負った咎だ」
「そう、ね」

 でも、見守ることしか本当にできないの?

+++
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